平和教育学習会 ・懇談会
日 時:2013年9月15日(日)午後1時から5時
場 所:広島平和記念資料館東館地下会議室1(予定)
内 容:
「平和をつくる力を育てよう」*村上登司文(京都教育大学教授)**
資料代:500円(当日会場にて)
申込み:フォームにて https://ssl.form-mailer.jp/fms/6e79e445210113
主 催:平和教育地球キャンペーン中四国支部 http://gcpej.jimdo.com/
問合せ:赤松 敦子(同支部事務局)
e-mail: peacemessagestakamori[at]yahoo.co.jp
*プロフィール
1955年に広島県尾道市に生まれ、福山で育ち、大学は広島です。就職で初めて広島県外に出て、現在は京都教育大学の教授です。専門は平和教育学と教育社会学で、研究テーマは、①平和教育カリキュラムの編成、②平和教育学の可能性です。平和教育に関して、京都教育大学で授業を行い、大学公開講座を行い、教員免許更新講習で科目を開講しています。平和教育授業研究
会を毎年1回開催しています。モットーは「教育とは子どもに希望を語ることで、教員養成とは希望を語る仲間を増やすこと」。著書に『戦後日本の平和教育の社会学的研究』(2009年)があります。
**ワークショップの紹介
広島の被爆体験を聞いてそれを継承することは、平和の大切さを考える上で有効な学習方法の一つです。受け止めるだけの受け身的な学習に終わるのではなく、学習者が発信者や表現者、つまり伝える側になる活動は、さらに有効な平和学習になります。平和教育をする際に、①戦争について学んだことを他の人に伝えるように、②平和の問題を日常の課題とつなげるように、③子ども自身が気づいて考えるように、④平和の形成に自ら参加するように、そんな平和教育をめざすことを提案します。「平和をつくる力」を育成する教育内容と方法について、ワークショップの中で意見を交流します。
〔スケッチ・ルポ〕
「平和をつくる力を育てよう」とのワークショップが、村上さんのファシリテーション(進行)でおこなわれた。参加者は18名、大学生や学校関係者、自治体職員、NGO関係者と多岐にわたった。90年代から開発教育や人権教育、そしてグローバル教育では参加型の手法が提案されてきた。しかし、平和教育の分野では、まだ、未地なのではないかと思われる。アクティビティの詳細を記載すると、ネタバレになるので、簡略して報告する。
チェックインとして、さまざまな色のリボンから平和をサポートする色を選び、ハンガーに結んだ。平和をサポートする・・・を考えることで、より身近にとらえらるとのこと。
ワークショップは4部構成ですすめられた。セッション1は、言葉を使わず「何月生まれか」で集まる「仲間探し」といったアイス・ブレイキングからはじめられた。つづいて「得意だった教科」や「平和をサポートする色」では、その理由も共有された。次にあるトピックに関して、4コーナー(部屋の四隅)に掲示された「そう思う・ややそう思う・あまりそう思わない・そう思わない」のところに集まるアクティビティをおこなった。トピックは日常生活に関するものからはじめられ、学校や戦争・平和に関するものとなった。もし、こうなら、こうだが、、、とか簡単には判断できないものもあり、意見の多様性が可視化される。次にペアになり、渡された写真が何か話し合うこと(フォトランゲッジ)をした。写真はさまざまに読み取れるし、意外性のある題材を用意することが鍵となる。
セッション2では学校における平和教育の実態および沖縄と広島の平和教育について示された。兵庫県での2005年度での調査では約70パーセントの小学校で、約30パーセントの中学校でなされている。道徳では7,8割なされており、総合が半数以上、教科でも半数余りがなされている。また行事では3割、教科では社会(9割)、国語(6割)、音楽(3割)となっている。題材では原爆や空襲、憲法が半数以上を占める。
セッション3は、再度、参加型のアクティビティで、平和のイメージを絵に描き、ペアで披露しあった。また「私は今平和記念資料館にいます」からはじまる文章をたとえば総理や広島市長、館長、米国大統領、父や母にハガキを出す想定で印刷されたものに書いた。その後、ペアでのアイスブレイキングの後、グループになり「平和の進め方を相談しよう」というロールプレイを行った。そのグループでは何か結論をだすのではなく、ロールを体験するということであった。
セッション4は、平和をつくる教育のために、平和な社会をつくるために努力した人や平和団体として中学生がどのような人たちあるいは団体を知っているか、日本やドイツ、英国でなされた調査の概要が示された。
最後に、「平和のための希望は行動によって現実になる」「一隅(いちぐう)を照らす」という引用句が紹介された。その希望は社会的なもの(Social Hope)であり、他の人びととの行動であることであるとされた。人権教育の古典でもある「欲しいもの、必要なものと権利」というアクティビティとの関連では、希望はどうなるか、興味深い。ソーシャルメディアやソーシャルビジネスとソーシャル視点が注目されている。内面の平和、安心そして、社会の安全、総体としての平和を考える視点になるのではないかとも思う。ホリスティック教育には、東洋思想が影響をあたえている。わたくしの行為が、世界を変えるのであり、世界の総体はわたくしの今、ここでの一瞬に関与するということは、わたくしと平和とのつながりを考える意味で意義深い。
冒頭、三時間半にわたるワークショップだが、それを長いと思うか、短く感じたか、再度、問われた。一堂、短く感じたとのこと。ワークショップをどう次につなげるか。見通しを持ちたいとも思う。
参考
『地球市民を育む学習』(D.Selby, G.Pike、明石書店)はグローバル教育の古典であり、『グローバルクラスルーム』(同、明石書店)ではより具体的展開が示されている。
(浅川 和也)