「平和教育」への危機 ~ 至急ノーマル(平常)化を

 

 浜地 道雄


はじめに

   コロナ・パニックはとどまることを知らず、いよいよ「アブノーマル」化している。そこで、もっとも危惧されるのか社会システムの崩壊。就中、未来を担う若い人々の(グローバル)教育である。「平和教育」の視点から、ことを改めてレビューしてみよう。1)「コロナ・パニック(全国一斉休校)」及び2)「米大統領選挙(核のボール)」の分析、対応が焦眉の急である。

1)コロナ・パニック(全国一斉休校)
 安倍晋三前総理の「独断」による「要請」が関係者の困惑をよそに、一斉に全国展開となった。安倍前首相の「病気による突然の辞任」は、実はこれらの「大失策」についての負い目からくるストレスであったとも思われる。2月7日に安倍前首相が唐突に発出した「(全国一斉休校)要請」は深刻で、荻生田文部科学大臣に伝えられたのは前日であった。それが各都道府県の教育委員会を通じて公立小中高全校に伝わり、結果として、例外を除いて全面的に実施された。

 

   筆者は当初より「正しく恐れる」ことを主張し、拙稿第4)項に「未来を背負う若者の教育」への危惧を記した〈http://jicl.jp/hitokoto/backnumber/20200810.html〉。


 それが、何と10月7日、民間のシンクタンクが「調査報告」を発表し、驚くほど仔細が記されている。我が意を得たり、とはこのことだ〈https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201007/k10012652651000.html〉。

 

   ここでは、2月発表の一斉休校はやはり安倍晋三首相の独断で発出した「要請」で、関係者の困惑にもかかわらず、全国実施に至り大混乱、と明記されている。同報告で一点看過出来ないのは政府関係者の本音、「泥縄だったけど、結果オーライ」。

 

   だが、現在、10月中の時点で「結果」は出てない。重要問題として「教育」「社会生活」「経済」の深傷は回復の目途かたってないどころか、これからいよいよ深刻化しよう。


 又、報道される「(ポスト・コロナの)ニュー・ノーマル」。これは注意を要する。ノーマル、即ち、文字通り「正常化」であるからには、まずは一旦、「コロナ・パニック」以前の通常の姿勢にまず戻ってみよう。そこに立ち返った視点から「新しいこと」「次の段階」「未来」を考えなければならない。


   例えば、文科省発令になるGIGAスクール構想。全国「児童生徒向けの一人1台端末(とネットワーク)」とのこと。が、ネットで端末に張り付く子供たちが成長した時、どんな姿になっているだろう。やはり、「人とのふれあい」が不可欠である。GIGA、即ち、Global and Innovative Gateway for Allとのことだが、そのGlobalの意義がどれ位共有認識されているのであろうか。Globalであるなら、そこには、「言葉(英語)、異文化理解」というコンテンツ、国際交流の実施が必須項だが、それらが加速されたという情報は見当たらない。


 また、一体、全員マスクはどういう意味があるのか。現状、「人から移される」恐怖心から全国民がマスクをしている。だが、マスクにその効果はない、という学説も浮上している。即ち、マスクをするのは「人から移される」ということではなく「人さまにうつしてはいけない」というモラル意識に切り替えよう。

 

   利己的⇒利他的という発想の転換。一部強硬派の主張する「武器をもって美しい日本」を構築するのではない。お互いを尊重し、思いやりにあふれた国民性の昇華である。


 立ち返ってみよう。(PCR)検査 ≠ 陽性 ≠ 感染 ≠ 発病 ≠ 重症化 ≠ 死亡 なのではないか。やはり(年代別)死亡者数にこそ注目すべきである。

2) POTUS=米大統領選挙(「核のボタン」がどちらに?)
 いよいよ11月3日、火曜日、米国大統領選挙(及び連邦議会=上院・下院、州議会、地方議会の議員の選出)だ。「日本にとって」という視点からも専門家を中心に多くが語られ、解説されている。が、米大統領のもつ決定的な権限「核のボタン」が語られることが少ない。本来、唯一の被爆国として日本(人)が最も注目すべき事項なのだが---。
 「核のボタン」とは実際には「ボタン」ではないが、米大統領に「核兵器発射」の専決権があることの象徴としてのことばだ。2016年5月27日、広島平和記念公園を訪れたオバマ米大統領に同行の米軍の大統領付武官(右端)が携えている核攻撃の承認に使う機密装置を入れたカバン(「核のフットボール」と称される)が朝日新聞の写真からもわかる〈https://www.asahi.com/articles/photo/AS20160530004523.html〉。
 
トランプ、バイデン、両候補の「核兵器」を巡る論争
 民主党はバイデン元副大統領/ハリス上院議員が正副候補者を選出。方や、共和党はトランプ現大統領/ペンス現副大統領を選出した。「正副大統領候補」Running Mateの組み合わせはTicketと呼ばれる。


 本年、2020年は広島・長崎への原爆投下から75周年。8月6日広島、9日長崎。さらに8月15日の終戦記念日には平和を願う多くの記念式典があり、報道・解説された。この式典に当り、バイデン候補は「反核」の声明を寄せている。「広島長崎への原爆投下と同じ歴史を二度と繰り返さない……」。

 (I will work to bring us closer to a world without nuclear weapons, so that the horrors of Hiroshima and Nagasaki are never repeated...)

 

   さて、あの広島・長崎への原爆投下のわずか一か月前、1945年7月16日。「マンハッタン(核開発)計画」に基づき、世界で最初の核実験「トリニティー実験」がニューメキシコ州Socorro市南部で行われた。


 トランプ大統領はこの実験の75周年にあたる7月16日、これを公式声明の中で「科学技術上の偉業だ」と称賛した

 (...remarkable feat of engineering and scientific ingenuity. )。

 

   このトランプ大統領の「祝辞」について、バイデン氏は「トランプ政権はネヴァダで核兵器実験を計画しているが、無謀で危険だと気づくだろう」

 (The possibility that the Trump administration may resume nuclear explosive weapons testing in Nevada is as reckless as it is dangerous. )

   と反応している。


   尚、このマンハッタン計画・トリニティー核実験への反省、抗議を込めて、1955年7月9日、「ラッセル・アインシュタイン声明」がロンドンで発出された。これを受けて、1957年7月7日、日本からは湯川秀樹博士、朝永振一郎博士らも加わり、カナダのノバスコシャ州小さな島パグウオッシュで「科学と世界の諸問題に関するパグウオッシュ会議」(1995年ノーベル平和賞受賞)が開催され、今も続いている。

前回2016年の選挙戦におけるトランプ対バイデンの「核兵器」を巡る論争
   前回の大統領選挙は4年前、2016年11月8日(火)だった。その前哨戦の8月15日、ペンシルバニア州Scranton市における民主党大会。ヒラリー・クリントン(国務長官)候補の応援演説でのバイデン副大統領の言葉は日本人にとって特記すべきものだ。「彼は核武装を禁止した日本国憲法を我々米国が書いたことを理解してないのか(Does he not understand we wrote Japan’s Constitution to say that they could not be a nuclear power?)。

 

   学校で習わなかったのか。彼は判断力が欠如しており、信用できない。核兵器を使用するための暗号(=核のボタン)を知る資格はない」。ここでの「彼」とは共和党Donald Trump候補を指し、強い批判だ。


  日本国憲法に核兵器のことは触れられないが、このバイデンの「日本国憲法は米国が作った」という発言は微妙だ。安部晋三首相が悲願とする憲法改正の根拠は「日本国憲法はGHQの押し付け」だということである。とまれ、第9条の「戦争放棄」の成立については当時の首相幣原喜重郎(英語が堪能)がマッカーサー司令官と3時間に亘り話しあった結果という資料も見つかっている。

 

   そして、この「トランプ氏の発言」とは、日本(及び韓国)の核武装容認を指す。例えば、遡る3月29日、ウイスコンシン州Milwaukee市でのCNNの共和党市民集会での発言だ。「日韓両国は将来核兵器導入を検討するだろう」

 (Japan 〈and Korea〉might need to consider obtaining nuclear weapons in the future. )。

 

   いよいよの米国大統領選挙。赤(共和党の色:マスコットは驢馬)か青(民主党の色:マスコットは象)かと固唾を飲む思いが増す。特に、世界の核を巡る緊張感が高まる中、「核のボタン」を誰が所有することになるのだろうか。

米大統領と安倍晋三前総理大臣
  4年前の2016年11月8日の選挙で(ヒラリー・クリントンを破り)トランプ候補が「内定」(翌年1月20日の就任までは正式ではない)した。早速、安部晋三首相は11月17日、世界の要人に先がけてNY市内のトランプ氏私邸を「非公式訪問」をし、高級ゴルフクラブを贈呈、「個人的信頼関係」構築の緒とした。その時点で、米国大統領はオバマ氏であったわけで、由々しき問題として外交筋の話題になった。

 

   安倍前総理のトランプ米大統領への「すり寄り」が地球儀俯瞰外交という平和を脅す事態を導き出したということを忘れてはならない。安部前首相から「禅譲」を受けた菅義偉新首相。どのようにこれらの課題を継ぎ、グローバル化に立ち向かうのか、注視せねばならない。

読者へのメッセージ
    本年、4月17日、筆者は「『正しく恐れて』コロナ・パニックを乗り越えよう ~ グローバル時代の若き世代ために」と記した< https://epajapan.jimdofree.com/note-2/a/ >。


   本稿は米大統領選を政治的視点から占うものではなく、エヴィデンス(発言記録)から検証した個人的見解です。ビジネス一辺倒の筆者は、政治論争については門外漢ですが、中東および米国での駐在経験よりして、「九条は世界の宝」「核兵器は廃絶」と強く主張してきました。

 

   本稿は「穏健、中庸、公正」を旨としてEvidence(証左)に基づき拙論を記しました。読者の皆様からの、ご意見、ご意見を鶴首申し上げます。
   

   浜地 道雄 TBE03660[@]nifty.com

 

 2020/10/18