IIPEの概要
平和教育国際研究集会(IIPE)は1982年にはじめられた。以来毎年、世界のさまざまな場所で開催されている。最初のIIPEはコロンビア大学テイーチャーズ・カレッジにおいて、ベテイ・A・リアドン、ウイラード・ジェイコブソン、およびダグラス・スローン教授らによって、また米国・教育省の協力のもとに開催された。
IIPEは世界中から教育者と専門家がつどい、仲間とともに仲間から学ぶ、多様な文化からなる協働で学ぶ機会であり、批判的で、参加型ですすめる平和教育の短期間の学習コミュニティのひとつの典型である。この集会は、平和教育者のネットワーキングをすすめ、仲間をつくるよい機会であり、これまでも共同してさまざまな研究プロジェクトにとりくんだり、地域や近隣諸国、世界規模での平和教育のとりくみを生みだしてきた。国際平和ビューローは2005年度のユネスコ平和教育賞にIIPEを推薦するにあたり、IIPEを「おそらく平和教育を多くの教育者にひろめる、もっとも有力な非政府組織であろう」と評した。
平和教育の理論を発展させ、実践および政策提言をすすめるということがIIPEの社会的な目的である。 IIPEがとりくむ3つの目的を次にあげる。
1)平和教育の本質を発展させるために、日々、進歩する要素をとりこみ、最新のまた現実的な意味のあるテーマに関して探求する。
2)NGOや大学ほか諸機関などによる、より効果的な国際的連携によって、平和教育の理論と実践に関する専門知識の交流をすすめる。また関係者にとって相互に益のある教育改革のとりくみを推進する。
3)IIPEでは地球規模の問題への地域での協力をすすめ、リソースを最大限活用し、理論と実践を発展させ、地球的視野で教育実践をすすめる。
地球的課題にたいして平和教育は何ができるか。その展望をもつために世界各地での経験を最大限生かすことができるよう地域での協働をはたらきかける。そのため、地域で活動する組織などから参加が得られるよう開催地域からの参加者が半数以上あるように計画される。IIPEは、毎年、ことなる大学やNGOなどの組織の協力によって開催され、平均65人ほどの参加者によってなされる1週間にわたる集中プログラムである。創設以来、IIPEは、これまで、カナダやコスタリカ、エルサルバドル、ギリシャ、インド、日本、レバノン、オランダ、フィリピン、韓国、スペイン(バスク)、トルコ、米国の12カ国以上におよぶさまざまな国で開催されてきた。
IIPEは参加者が平和を実現するために、平和に関する課題や平和にとって何が障害になっているかを把握するための理念と方法を学ぶようにすすめられる。しかし、より重要なのはそれらの課題にとりくむことためのクリテイカル・シンキング(批判的思考力)や探究、省察といった技能や能力を身につけることである。またもうひとつの(オルタナティブ)なあり方を現実的に構想すること、そしてそれらを実現するための方策を実行できるようになることもねらいとしている。IIPEは参加者によって、相互に、ともにつくりあげられる。それは学習者が学習コミュニティという共同体で学ぶというパウロ・フレイレの思想と実践のながれをくむものである。
IIPEをあらわすキーワードは「参加者」と「参加型」である。「参加者」と「参加型」という2つの言葉はIIPE
の特徴をよくあらわしている。IIPEでは他の研修や行事とちがい、発表者も参加者であり、参加者は双方向に学びあうことができるように同じようにかかわる。IIPEは世界のあらゆる地域の多様な平和教育者と活動家の知識と経験をもとに、人権とくに女性の権利の実現にむけて、これまでの経験とさまざまな事例から学び、脱軍事化と紛争解決にへのとりくみをすすめる。
IIPEのプログラムはIIPEのあらゆる場で参加者が相互に学ぶことができるような仕組みになっている。はじめのオリエンエーション、全体会、ワークショップ、セミナー、現地訪問、およびふりかえりグループといういずれの要素もIIPEにおいて、それぞれの機能を果たしている。
オリエンテーションではIIPEのねらいとすすめ方が示される。また学習コミュニティを皆でつくっていくために、たがいに知り合うきっかけをつくる。オリエンテーションとともに全体会でも
IIPEが学習コミュニティとなり、皆がたがいに知り合う場となるよう配慮する。全体会ではその後のワークショップで皆が共通に理論的な基盤を得られるようパネル(シンポジュウム)がもたれる。いずれのIIPEでも地域への現地訪問が企画され、地域の実状と、その土地の人たちが直面する正義と平和に関する問題を見いだす機会になる。ふりかえりグループは、学習コミュニティができていくさまを経験する大切な時間である。ふりかえりグループは参加者同士が、その日の成果をわかちあう基盤であり、ふりかえりグループは、学んだことを吟味し、安易に成果に甘んじないで、さらに発展させる場である。
またIIPEで学んだあらたな知識と経験をそれぞれの参加者の仕事と個人の生活に結びつけて考えを深める機会となる。「典型事例」IIPEでなされてきた実践を参照、またIIPEの歴史と理念の詳細は、IIPEのウェブサイトを参照のこと。〔URL〕 www.tc.edu/PeaceEd/IIPE
現在、IIPEはナショナル・ピースアカデミーの主催になっている。
「CIPEマニュアル」より